2024.11.19
2024.11.19
日本では、多くの企業で新入社員に対して新人研修を行っています。新人研修とは、新入社員がこれから働くうえで必要な知識や心構えなどを指導するものです。
しかしながら、「新人研修は当たり前に行うもの」と、習慣的になってはいないでしょうか。あるいは、新人研修の目的や意義を整理して、有意義なものになっているのか否かという点や、新人研修の設計やそれに沿ってスムーズに進めることが難しい、などの疑問や課題が生じていないでしょうか。
この記事では、新人研修を行う目的、実施方法、成果を上げる方法をご説明します。ぜひ、新人研修の実施に役立ててください。
まずは新人研修を実施する目的をご説明します。新人研修を実施する目的は以下のとおりです。
新人研修は年度初め、もしくは年度初めの少し前に行います。参加者の多くは新卒者のため、学生から社会人にマインドを変えなければなりません。それまで学生だったから許されたことであっても、社会人となれば自らを律して行動することが大切になります。
また、近年では「ゆとり世代」や「さとり世代」などと呼ばれる、自分のことを優先する新入社員が多い傾向にあることは確かです。自分のことだけではなく、社内全体やほかの社員のことも考えられるような意識づけをする必要があります。
社会人に必要な考え方は幅広いですが、そのひとつに情報の取り扱いやコンプライアンスがあります。どのような企業であっても、自社が取り扱う情報の取り扱いには注意が必要です。万が一、情報漏洩をすれば企業モラルが問われて信用を失ってしまいます。また、企業が法令を遵守することであるコンプライアンスについても指導する必要があるでしょう。簡単に言えば、不祥事などを起こさないように新人研修で教えることが必要です。
会社に勤めるものとして、会社の成り立ちや企業理念などへの理解は大切です。すべての社員が共通の目的をもって行動するために、企業理念などは新人研修で伝えるべきでしょう。また、取り扱う商材に関するルールや、事務処理のルールの共有も大切です。ほとんどの新入社員は、入社試験の際に企業研究をしていると思いますが、それでも網羅しきれない部分があるため、会社に関することをしっかりと伝授してください。そのような会社に関する理解が深まると、新入社員もモチベーションが上がるでしょう。
新人研修は基本的なビジネスマナーを身につける機会です。社会人経験のない新入社員には、ビジネス上のほとんどの行動や行為が初めてとなります。研修中、研修が始まる前、1日が終わった後の心構えなどを指導しましょう。さらに、ビジネス文書の書き方、PC操作、社内の独自システムなど仕事に必要なスキルも研修で指導してください。
新人研修中に、自社の業務に必要な専門知識を身につけさせることも欠かせません。研修後に、新入社員はそれらの知識をもとに実践して、習熟度を高めていきます。特に新人研修期間中の習熟度が高ければ高いほど、現場に着任した際の心理的負担が減るでしょう。
報連相も社会人として最低限、身につけるべきものであり、どのような業界、職種であっても報連相は必要です。報連相の意義をしっかりと理解させて、そのタイミングも指導する必要があります。仮に、報連相ができない状態で実務に入ると、業務の進行が円滑に進まずに、新人社員自身も悩んでしまうでしょう。よって、社内のコミュニケーションのとり方を明確にしておいてください。
以上が新人研修を行う目的です。どれも大切な内容となるため、再度、確認しておきましょう。
ここからは、新人研修のカリキュラムについてご説明します。以下のカリキュラムは、業界や業種を問わず取り入れてみましょう。
ビジネスマナーを学ぶためのカリキュラムです。敬語の使い方、電話応対、名刺交換、身だしなみなど、一般的なもので十分なので、取り入れてください。ただし、なぜその研修を行うかという理由を明確にすることが大切です。基本的なビジネスマナーは研修のときだけできればいいものではなく、実務でできてこそ取引先などからの評価が高まります。そのことを研修で伝えるようにしてください。
社会人になると、上司や取引先など数多くの人と関係をもちます。そのため、相手に応じてコミュニケーションをとることが大事です。新人研修では理想的なコミュニケーション方法を伝授して、新入社員のコミュニケーション能力を育てましょう。
以上のほかに、以下のようなカリキュラムを取り入れることも効果的です。
スタンスとは、仕事や課題に対してどうあるべきかの意識や基準を開拓する研修です。スタンスは、社会人として成長するための基礎となり、後々会得することが難しくなります。よって、新人研修のカリキュラムに入れると、社員育成に効果をもたらすでしょう。
ポータブルスキルとは、業界や業種に関係なく、社会人として求められる汎用的な能力です。具体的には、決断力などの自分自身の力、計画力や思考力など課題に対する力、傾聴力や主張力などのコミュニケーション能力があります。
専門的な知識やスキルが必要ならば、テクニカルスキル開発研修を行いましょう。プログラミング研修、技術者研修などが一例です。
以上を参考に新人研修のカリキュラムを検討してみてください。なお、新人研修では特に、スタンスやポータブルスキルに関して指導するといいでしょう。スタンスやポータブルスキルは、後から会得することはなかなか難しいうえに、専門分野のスキルや知識を活かし、仕事で成果を出すための土台となるからです。
新人研修を成功させるためには、以下のポイントを覚えておきましょう。
新人研修の成果を求めるあまり貪欲になりすぎると、新入社員自体が空回りする可能性があります。そのため、新人研修のカリキュラムを正しく設計することが大事です。まずは、新入社員のレベルを把握するためのアンケートや、OJTを内々定の段階で行ってみましょう。
その後、研修担当者は経営陣や現場の社員にヒアリングして、育成方針や実務で必要なスキルを把握してください。新入社員に必要なスキルが具体化されるとカリキュラムがつくりやすくなります。また、研修に入る前は企業理念や事前資料をしっかりと復習して、担当者自らが新入社員を導いてください。
新人研修が終わりに近づくと、新入社員に今後の目標を立てさせることがあります。その際に「視野を広げた行動をとる」「実務に慣れる」など、さまざまな意気込みを得られることでしょう。しかし、それらが言葉遊びにならないように、具体的な行動レベルまで掘り下げてください。例えば、単に「実務に慣れる」だけではなく、「始業前、作業の節目に必ず上司に報連相を行い、フィードバックを受ける」など、具体化させることが大事です。
新入社員一人ひとりに、セルフリーダーシップを身につけさせると、部署に配属された後もアイデアを出すことはもちろん、意見を整理することが可能です。全員がセルフリーダーシップを発揮することで、チームや部署が活気づいて成果に結びついていきます。ですから、新人研修を通じて新入社員のそれぞれがどのようなセルフリーダーシップを発揮できるのか、問いかけるといいでしょう。
以上を参考にして、新人研修のカリキュラムの設計や運用に役立ててください。
新人研修の実施は、自社で担当部署を中心として行う場合と、研修自体を外注する方法があります。ここでは、自社で新人研修を行うときのメリットとデメリットをご説明しましょう。
新人研修を自社で行うときのメリットは以下のとおりです。
研修費用の削減につながる
自社で新人研修を行う最大のメリットといえることが、研修費用の削減です。特に限られた予算しかない中小企業であれば、外部委託することができずに、自社で研修を行う場合もあるでしょう。担当部署や担当者の負担は増えますが、数十万円、数百万円という費用を削減できることは企業経営にプラスとなります。
ノウハウを蓄積できる
自社で新人研修の企画から実施まで行うと、それ自体が社内の資産となり、積み上げていくことができます。また、研修のノウハウを引き継いでいくことで、後世の人材育成に活かすことも可能です。
独自のカリキュラムで実施できる
自社で新人研修を実施すると、企業理念や経営戦略に合致したカリキュラムが作れます。外注した場合よりも自社の事例活用、独自ノウハウの教育が行いやすく、社内ニーズに沿った研修になることもメリットのひとつです。
講師を務めた社員の成長につながる
自社で新人研修を行う場合は、社内で担当部署を決めて講師を選定してください。研修の講師となった社員は、新入社員の教育という視点から自分の仕事を見つめ直す機会となり、通常業務では経験できないことを体験します。また、講師を務めるという使命感からモチベーションの向上も期待できるでしょう。
カリキュラムの修正や変更、見直しがしやすい
新人研修は、企業によりカリキュラムが異なる場合があり、その内容もさまざまです。また、法改正などに伴い、企業戦略が変更となることもあるでしょう。業界や業種によりスピーディーな対応が必要なときは、新人研修の内容も毎年のように変更することになります。そのような事態になっても自社で新人研修を行うときは、すぐに対応することが可能です。さらに、新入社員の反応や成長を見ながら研修内容をアレンジしたり、研修後のフォローもしやすいでしょう。
以上が自社で新人研修を実施するメリットです。
自社で新人研修を実施するデメリットは以下のとおりです。
企画や資料作成などに時間がかかる
自社で新人研修を行うと費用削減になりますが、一方で社内コストが増えてしまいます。たとえば、カリキュラムの企画、講師養成、研修会場費用、資料作成などの負担が増えることが確実です。また、新人研修を担当する社員がほかの業務を兼務していると、通常業務の割り振りなどもあり、ほかの社員への負担を強いられる場合があります。よって、社内コストに関しては検討が必要となるでしょう。
講師となる人材が必要
新入社員をしっかりと指導するには、それ相応のスキルや人間性のある社員が必要です。通常業務をこなしつつ、講師としてのスキルを身につけることは簡単なことではありません。かえって社員に負担をかける可能性もあるでしょう。その点を考慮して講師の育成を行うことが大事です。
研修の質を判断しにくい
研修を外注すると、業者が研修の成果や満足度に厳しい基準を設けます。そのため、研修の質や成果がわかりやすくなります。しかし、社内で新人研修を行うと、質や成果の基準を設けないことが多くなり、成功に終わったのか否かが、わかりにくいです。また、講師も受講者も社員同士となるため、緊張感が途切れることもあります。
自己流研修になる可能性がある
自社の社員として必要なものを研修で取り入れますが、自社でカリキュラムを検討すると偏りが出る場合があります。また、講師となる社員が十分な訓練を受けていないと、講師自身の経験で指導することが多くなり、我流の研修になる可能性が高いです。そのため、研修内容の検討や講師の訓練にも注力することが大切になります。
自社で新人研修を行う場合は、以上のデメリットがあることを踏まえておきましょう。
新人研修を自社で行うときのデメリットを解消するには、研修を外部に依頼することが有効です。研修を外部に依頼すると、社内コストの削減やプロ講師の指導により新入社員の理解や吸収も早まります。また、社外の視点を取り入れることで自社にとっての視野も広がるでしょう。
なお、外部に研修を依頼するときは、その一部を委託するようにしましょう。理由は企業ごとに必要なカリキュラムが異なるからです。
例えば、プログラミングなど専門的な知識の研修が必要な場合は、研修の一部を社員が教え、足りない部分を外注してみてください。ビジネスマナーの研修カリキュラムだけが大人数の受講者となるならば、その日程だけを外部に依頼するのもいいでしょう。
また、自社の社員が研修の準備をする時間がないならば、企画や準備を外注することで通常業務に専念できます。
このように、新人研修のすべてを業者に依頼するのではなく、社内でできない部分を外注することで、コスト削減と研修の効果を得ることが可能です。
新人研修は、新入社員に幅広いスキルを指導する研修であり、さまざまな目的があります。
また、新人研修は、自社で実施する方法と外部に依頼する方法があります。いずれもメリットやデメリットがあるため、自社の状況を確認しながら研修を企画しましょう。
この記事を書いたコンサルタント
株式会社FCE
(編集部)
株式会社FCE 人材育成コラム編集部です。 人材開発/研修を検討中の方、組織力の向上を目指し情報収集をしている方向けに有益なコンテンツを発信していけるようサイト運営をしております。
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