2024.11.19
2024.11.19
激化するIT化とグローバル競争の中で、多くの企業が人材育成について改めて考える必要に迫られています。製品やサービスを企画するにしても、販売するにしても、社内のリソースをフルに活用して強靭な組織を構築しなくては、外国企業と戦っていけなくなるためです。
日本でも今はコロナウイルスや働き方改革の影響によって、企業組織は半ば強制的に変革に迫られているといっても過言ではありません。このような中で重要になってくるのが、「効果的な教育」です。
事実、多くの中小企業にとって「優秀な人材の確保」は困難な状態が続いています。大企業や外資系の巨大ベンチャーに優秀な人材を取られてしまうためです。このような中で優秀な人材を確保するための数少ない手法が「効果的な社員研修」なのです。
そこで今回は、効果的な社員研修を行うための企画のポイントについてご紹介していきましょう。
「研修を企画する」というフレーズに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。研修の企画とは、効率的に学習させることができるように社内研修プログラムを策定して適切に管理することをいいます。
しかし、なぜ「企画」が必要になるのでしょうか?
例えば研修の手法としてOJTというものがあります。OJTは現場で実際に実務を行いながら新入社員一人にメンター(指導者)を付け、指導を行わせるというものです。この方法はいち早く自立して業務を行うために必要なスキルを身につけるために非常に効果的な方法でありますが、一方で以下のようなデメリット・注意点もあります。
・受講者はインプットとアウトプットを同時に行わなければならない
・指導者の力量によって研修成果にばらつきが出る
・基礎的なことが欠落してしまう可能性がある
このようなデメリットを理解した上で、OJTの他にこれらのデメリットを埋める教育プログラムを策定しなければ、長期的に見たときに早期離職、生産性の低下、クレームなどにつながるおそれもあります。
行きあたりばったりの研修を施すのではなく、「現場で使える人材」に確実に成長させるために、計画的に研修プログラムを策定する必要があるのです。
では、計画的な研修プログラムとはどのようなものなのでしょうか?
以下では、研修を企画するときはどのようなことに注意するのか、またどのような手順で行うのかについて解説していきます。
研修においても、その「目標」を掲げ、目標達成を確実にするための計画を策定する必要があります。
目標を決めるためには「社内研修や社内教育における組織の内外の課題」を把握する必要が出てきます。例えば、以下のようなことについて考慮して、現在組織が抱える課題を明確にしていくとよいでしょう。
・組織に足りていない人材はどのような人材か
・組織が新入社員に対して抱える問題は何か
・これから外的要因によって変化するものはないか
・組織がまず対処すべきリスクは何か?
上記のような視点で組織が抱える教育や研修に関する課題を抽出し、その課題に優先度を付けて、目標の設定につなげます。
研修における目標とは「研修の結果どのような人材になってほしいか」という人物像を策定することです。この人物像へと育成するためには、現状どのような課題があるか? ということを抽出していきます。
社員研修に関しては人事担当者やスタッフ部門によって行われることが多いと思いますが、確実に課題を抽出するためにも、経営層や現場がどのような人物像を求めているかということを、あらかじめ把握しておくようにしましょう。
目標はただ設定すればよいというわけではありません。真に効果のある研修を行うためには、適切な目標を掲げる必要が出てきます。
目標策定に活用できる効果的なフレームワークに「SMART(スマート)の法則」というものがあります。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Related(関連している)、Time-bound(期限がある)の頭文字をとったもので、これら5つのポイントを意識した目標設定をしましょうという枠組みです。
以下ではSMARTそれぞれについて詳しく見てみましょう。
・Specific(具体的)
目標は組織が目指すものです。組織は社会科学では「共通の目的を持った2人以上の集まり」という定義がされますが、この「共通の目的」という要素は非常に重要です。
組織の目標が曖昧であれば、組織内の人間は何をすればその目標を達成できるかわからなくなってしまいます。また、曖昧な目標は人それぞれ独自の解釈が入り込む余地を与えてしまいます。そうならないためにも、設定する目標は具体的なものとなるようにしましょう。
・Measurable(測定可能)
次に、測定可能な目標であることも非常に重要なポイントです。
測定可能な目標とは、数値に基づいた評価が可能な目標のことです。その研修は良いものであったか悪いものであったかという評価を客観的に下し、PDCAサイクルを回すためにも測定可能な目標を掲げるようにしましょう。
・Achievable(達成可能)
目標は無理難題を現場に押し付けるためにあるものではありません。その目標は現在の組織の状況を顧みたときに達成可能なものなのか、その目標の達成を確実にする計画は策定できるか、ということを意識してみましょう。
達成可能性を意識する際には、以下のような視点から達成可能かどうかを考慮してみるとよいでしょう。
・期限内に達成可能か
・その目標を確実に達成する計画を立てることができるか
・計画を実行するために十分な人材が揃っているか
・組織の内外の課題を考慮できているか
・Related(関連していること)
Relatedとは、掲げられた目標が社員研修の方針や組織が全体として掲げる理念と関連しているかどうかということです。意外に見落とされがちですが、これは非常に重要なことです。そもそも組織は経営理念を達成するために集まった組織であり、その理念を達成するために具体的な目標があります。全体的な「方針」があり、そしてその「方針」に相違ない目標を掲げることで、より強固な組織になっていくのです。
・Time-bound(期限がある)
目標に期限を決めることもとても重要です。なぜなら期限が決められていないと、どうしてもそのタスクは後回しになってしまうためです。目標の重要性を組織に認識させるためにも、具体的な期日を設けるようにしましょう。
SMARTの法則をまとめると、目標として据えるべき内容は「具体的で測定可能な、組織の方針と整合性のある、現在の組織の状況から達成が可能な期限付きのもの」となります。
求める人物像と具体的な目標が決まったら、いよいよその目標の達成を確実にする研修計画を立案します。この計画立案時には、最初に抽出した課題を意識することはもちろん、これまでの研修で行ってきた良いポイントを取り入れておかなければいけません。
ただし、最初から完璧で穴のない研修計画を立案する必要はありません。目標が測定可能であれば、「こういった要因で未達成となったため、次回はこのポイントを是正した計画にする」といったように、PDCAサイクルを回すことができるためです。
効果測定を行いながら長期的に完璧な研修プログラムを構築していけば十分な研修効果を発揮できるようになるはずです。
上記では、簡単に課題を抽出し、目標を設定し、企画立案するという大きな流れをご紹介してきましたが、「企画立案」をいきなり実績もない中で行うのは難しいでしょう。
ということで、以下では具体的に研修プログラムを策定するときに押さえておきたいポイントについてご紹介していきたいと思います。
まずは基本の考え方として、5W1Hを明確にするようにしましょう。研修プログラムを構築する際は、例として以下のように5W1Hに当てはめてみてください。
Where | 受講者は現在どのような”立ち位置”にいるのか?どれくらい目標の人物像から離れているのか? |
Why | なぜその研修を行うのか?研修の目的は何か? |
Who | どのような人を対象として研修を行うのか? |
What | どのようなことを教えるのか?何を伝えるのか? |
How | どのような方法で教えるのが効果的なのか? |
When | いつ行うのがよいか?どのタイミングで研修をするのがよいか? |
企業研修の手法には、OJTやOff-JT、グループ研修やeラーニング、外部セミナーなどさまざまな方法がありますが、誰にどのような教育が必要なのかということについて、上記の5W1Hを埋めながら考えていくとよいでしょう。
もちろん、ここでも前述で設定した「目標」や組織が直面している「課題」について考慮する必要があります。
一言で「研修」といっても、座学、グループワーク、OJT、レクリエーションなど、その手法はさまざまです。
予算の兼ね合いもあると思いますが、まず最初に「研修によって得たい結果を確実に得るためには、どの手法が最適なのか?」ということについて予算度外視で検討してみましょう。
座学形式のものやグループワーク形式のものは、外部の専門家に依頼するのか、社員に講師として登壇してもらうか、ということについても検討するとよいでしょう。
特に「これまで組織になかったノウハウやスキルを身に着けてほしい」と考えている場合は、外部のセミナーを利用したほうが効率の良いことが多いです。
もちろん、企業の予算には限りがあると思いますが、一度最適解を導き出し、そこから削れる部分を削っていくという考え方が望ましいでしょう。
研修を企画する際は、研修の内容を作り込むだけでなく、研修実施後に必ず効果測定を行うように計画しておきましょう。「その研修は自社にとって有益なものになったか」ということを検証せずに「例年通りに研修を行う」ということを繰り返していても、組織の力は強くなりません。
長期的な目線で研修をより効果的なものにしていくためにも、効果測定を行い、現場や経営陣からレビューをしてもらうような体制を構築しておきましょう。そして、そのレビューの結果をもとに次回、次々回の研修時に修正を行うのです。場合によっては研修前と研修後の比較を行う必要もあるため、研修企画時点で効果測定を行うことを計画しておくのが望ましいです。
今回は、より効果の高い研修を行うためのステップや、研修企画のコツについてご紹介してきました。
近年は働き方改革の影響もあり、人材の自主的な努力に社運を任せるのではなく、企業努力によって生産性を向上させることが求められています。グローバル化によって激化する競争市場の中でも、優秀な人材を確保することは難しく、経営陣にとってはますます厳しい状況が続くことが予想されます。しかし、このような時期だからこそ研修や教育体制を整える価値があるのです。
価値ある研修を行い、強力な事業基盤を整え、グローバル社会を生き抜いていきましょう。
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