2024.11.19
2024.11.19
日本では、どの業界でも伝統的に顧客とのコミュニケーションを大切にしてきました。ところが近年ビジネス環境に変化が訪れ、顧客との関わり方も変わりつつあります。また、新たに社会人としてデビューする人材の中には、本来身につけているはずのマナーが欠けているケースも見られます。
そこで現代の企業が注目すべきは、従業員が「接遇」のスキルを身につける重要性です。接遇は単なる接客マナーではありません。この記事では接遇とは何なのかについて解説し、接遇を身につけるための研修方法についてご紹介します。
接遇という言葉は、辞書を引くと「もてなすこと」と定義されています。一見すると接客マナーのことに思えますが、接遇はいわゆる「作法」のようなマナーとは一線を画すものです。同じように顧客に対応する場合でも、丁寧な接客と、おもてなしの心で接する接遇とは別のものになります。
一例として店舗で接客する場合を、良い悪いは別にして考えてみましょう。店を訪れた客に対して、目を合わせることもせず黙々と応対するのも接客の1つのパターンです。それに対して、適切な会話と動作で終始丁寧に応対することも接客です。
接遇はというと、丁寧なサービスはもちろんのこと、そこに笑顔やもてなしの言葉を加えて、相手を心地よい気分にさせることを表します。相手に対しておもてなしの心を伝えるという点が最も大切で、そここそが一般的な接客やマナーとは一線を画すところです。
そして、接遇とは接客業にのみ求められるスキルではありません。一般的なビジネスのシーンでも、取引先と良好な関係を築く場合や、新規顧客を開拓する場合などは必ず必要になるものです。特に現代の日本のように、これまでとはビジネス環境が大きく変化しているなかで、他社とサービスの差別化を図るうえでも接遇の有無が重要になるでしょう。
では、ビジネスシーンで活用できる接遇スキルは、どのような場所でどのような方法により身につけられるのでしょうか。ここからその具体的な方法として、接遇研修について解説します。
接遇のスキルを身につけることは、企業の従業員のみならず、企業そのものにも大きなメリットをもたらします。実際に業種を問わず接遇のスキル向上に力を入れているのは、国内の大手企業です。具体的にどのようなメリットが得られるのか、大きく3つに分けて見てみましょう。
接遇のサービスが徹底できると、顧客満足度が向上することが期待できます。例えば同じ商品を探しに、別々の店を訪れる場合を考えてみましょう。ある店では店員の接客態度が非常に悪く、もう一方の店では接遇による対応ができているとします。そのときもしくは次回商品を購入するのは接遇ができている店になるはずです。つまり顧客の立場からすると、商品のほかに自分がもてなされているという満足感が得られるのです。
接遇により顧客満足度がアップすることは、企業のブランド・イメージが向上することにつながります。現在eコマースの超巨大企業など、海外の大手企業は例外なく接遇を活用しています。ただし1つ注意すべき点は、企業全体で接遇を徹底することです。接遇を身につけていない社員が残っているという状況は、絶対に避けなければなりません。
顧客を相手にする場合は、どれだけ良いサービスを尽くしても、ある程度のクレームは覚悟しておく必要があります。そこで大事な点はクレームを避けることよりも、クレームにどう対処するかです。それにより、顧客に対する企業のイメージは大きく変わっていくでしょう。
接遇によって適切なクレーム対応ができれば、相手の顧客がその企業に対して信頼感を深める可能性もあります。これは企業同士の取り引きでも同じことがいえるでしょう。
さらに普段から接遇が徹底されていると、常に顧客満足度が高い状態が維持されるため、クレームそのものが少なくなるというクレーム防止効果も期待できます。企業にとってはクレーム処理の手間が軽減されるため、業務の効率化につながるというメリットすら生まれるでしょう。
接遇は相手に満足感を与えるだけではなく、企業の社員自身にもポジティブな効果をもたらします。まず、顧客と良好な関係が築けるようになれば、取り引きがスムーズに行え、売り上げや営業成績がアップする可能性があります。その結果、社員のモチベーションも向上するはずです。
同時に接遇は、社員の間でのコミュニケーションを良好にする効果もあります。職場環境が良くなって、社員同士の人間関係も良好になるでしょう。このように、接遇によってモチベーションが向上し職場環境が良くなれば、社員の離職率が低くなり、優秀な人材が集まる企業になるのではないでしょうか。
実用的な接遇スキルを身につけるには、接遇研修を受けることが効率的かつ効果的です。接遇研修はニーズに合わせて種類分けされているので、その中から必要な研修を組み合わせて、その企業の業務に合ったスキルを身につけるとよいでしょう。ここからは、それぞれのニーズにより分類された接遇研修を紹介します。
ビジネスマナー研修は、主に新入社員や若手社員を対象に行われ、いわば接遇のベースになるビジネス上のマナーを学ぶことが可能です。この研修では、社会人として当然身につけておくべきマナーから、実際に仕事上で必要なマナーまでが一連のプログラムで提供されます。
具体的には、身だしなみや言葉遣いのチェックと改善から始まり、正しい敬語の使い方など、普段は学ぶ機会が少ない細かなマナーまで習得することができます。正しいビジネスマナーを身につけることで、社員は自信を持って顧客に対応できるようになり、企業全体のイメージアップにつながるでしょう。
接遇のための接客マナー研修とは、単なる技術的な接客を学ぶための場ではありません。それよりもずっとレベルが高く、顧客満足度を向上させるための研修のことです。社員が研修で正しい接客マナーを身につけることで、リピーターを増やす効果が期待できます。特に接客業では、顧客がほかの企業には求められない、満足感が得られるからです。これは型どおりのマニュアル接客では実現できません。
このように、接客マナー研修では、接遇で求められる顧客にとって心地よい応対スキルを習得できます。このような心地よい応対を、欧米企業ではよく「体験(experience)」という言葉で表現します。お店で商品を手に入れるだけでなく、同時に素敵な体験ができれば、それがリピーターの獲得に絶大な効果を発揮することでしょう。
コミュニケーション研修は、相手の話を聴く力や相手に伝える力を養います。これは対顧客のみならず、組織内での人間関係を円滑にする効果もあり、企業内の職場環境を良くするために有効な研修です。特に、現在コミュニケーション能力の不足に悩む人は多く、その能力を高める機会として活用できるでしょう。
ビジネスの中で顧客や取引先とコミュニケーションをとるときは、普段よりも相手の話を聴く力が求められるといわれています。研修でこのようなスキルを磨くことができれば、企業の代表として社員は自信を持って顧客や取引先とやりとりができるようになるはずです。
現在はインターネットを通じたやりとりが増えましたが、相手と直接話をするために、今でも電話を通した応対が一般的です。ところが電話応対の良し悪しは、企業に対するイメージを左右するという怖さを秘めています。つまり相手が満足できる電話応対は、企業戦略の1つになり得るということです。
電話応対研修は、そつがない技術的に上手な応対を学ぶのではなく、企業の代表として顧客と向き合う姿勢について学びます。その中には基本的な受け答えのルールと、言葉遣いや正しい敬語の用い方なども含まれるのです。こうしたさまざまな要素を習得するために、実際の研修ではロールプレイングなど実践的な内容が多くなるでしょう。
クレーム対応研修で学ぶことは、顧客からのクレームをスムーズに処理することだけではありません。クレームの対応に接遇を活用することで、逆に顧客満足度を高めてしまうスキルアップも含まれています。当然クレーム対応が好きな人はいませんが、ビジネス上、必ず必要なスキルなので、研修を受けることは社員と企業の両方にとって欠かせないことといえるでしょう。
レベルの高いクレーム対応スキルを身につけておくと、顧客からのクレームに対して相手側の立場で考え、内容に合わせた適切な処理が可能になります。しかも適切な対応により、顧客の信頼度が向上する場合もあるのです。そのうえクレームそのものを減らす効果もあるため、業務効率の改善につながるかもしれません。
マネジメント研修は、主に企業の管理部門やマネジャーなどに対して行われる研修です。企業にとっては経営戦略に関わる重要な内容で、一見すると接遇とは関係がないように思えますが、本来組織の運営と接遇とは切っても切れない関係にあるのです。
マネジメント研修では、当然マネジメントの手法について学び、経営戦略の立て方や部下の育成方法についても学びます。それにプラスして、現代のマネジメント研修では接遇のスキルをもとに、組織を率いていく能力や、周辺とのコミュニケーションのとり方なども習得することが有効です。組織の中心になる人材が接遇のスキルを身につけていることは、組織全体にとっても重要であることは言うまでもないでしょう。
最後に、接遇研修をより充実したものにするポイントについて紹介しましょう。これから解説するポイントを意識することで、研修から学びとれることがずっと多くなるはずです。
ひと口に接遇を活用すると言っても、企業の業種・業態によって求められる接遇スキルはさまざまです。つまり企業にとっては、事前調査により社内での課題を見つけておく必要があるわけです。この課題抽出作業から自社の弱点が見えてきて、どの接遇を強化すればよいのかが明確になるでしょう。その結果によって、必要な接遇研修の選択も可能になります。
例えば接客業なら現場での様子を視察することや、クレームへの対応状況を精査することも重要です。また、顧客や取引先との関係を知るために、個々の社員との面談が必要になるかもしれません。しかしレベルの高い接遇のためには、社内の現状を客観的に分析することが必要です。研修の前に十分に時間をかけて、事前調査をすることをおすすめします。
接遇研修で具体的な体験をもとに学ぶことができれば、より大きな成果を得ることができるでしょう。こうしたケーススタディを積極的に活かすことも、接遇研修を成功させるポイントの1つです。どんな場合でも、ものごとを学ぶときは実際の現場で教えてもらうことが最も効果的です。
現場での研修が難しい場合は、ロールプレイングをとり入れて実践的な研修を行うことをおすすめします。接遇のスキルアップには慣れも必要です。現場に近い環境で進めるロールプレイングを繰り返すことにより、一段と効果的な研修にすることもできるでしょう。
現代社会は多様化の時代であり、顧客や取引先もさまざまで、企業で働く人材も働き方もさまざまです。この状況に流されてしまうと、組織内と組織外とにかかわらず、コミュニケーションをとることが難しくなります。
接遇研修でも、そうした環境に合わせて「ダイバーシティ(多様性)」に対応しなければなりません。この研修では相手の意見を聴いて、それに理解を示した上でコミュニケーションをとる必要があります。接遇とは相手に対して優れた接客技術を見せることではなく、相手を受け入れながら同時に相手をもてなすことが目的です。研修で学ぶべきポイントは、いかに相手をもてなすかということに集約されるのかもしれません。
接遇研修とは、接客のマナーや能力を磨くための場としてとらえられることもあり、マニュアルに沿った接客技術を高めるためのものというイメージもあります。ところが実際に行われている接遇研修は、企業にとっても従業員にとっても、自らの存在をより高める価値を持つものです。
現在日本のビジネス界は、昔からのおもてなしの心を見直す動きが広がっています。接遇とはそれを実現するための具体的な手段です。接遇スキルを身につけることが、将来的に世界のビジネス基準になるかもしれません。
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