2024.11.19
2024.11.19
現在の日本は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護と仕事の両立」など、さまざまな課題が突きつけられています。これらの問題を解決するために叫ばれているのが「働き方改革」です。
厚生労働省は、働き方改革として、「長時間労働の是正」や「労働生産性の向上」といった政策を推進しています。なお、2019年4月から「働き方改革関連法」が順次施行され、法的根拠も与えられました。このような情勢のなか、重要になってくるのが「タイムマネジメント」です。
タイムマネジメントはただの時間管理ではなく、「業務の効率化や生産性の向上を目指して、時間の使い方を改善すること」を意味します。タイムマネジメントを実践すれば、労働者の幸福度・満足度が向上するだけではなく、企業の成長につながります。
本記事では、タイムマネジメントについて知りたい方に向けて、概要やメリット、必要とされている理由、フレームワーク、実践する際のポイントなどを徹底解説いたします。
「タイムマネジメントという単語を見聞きしたことはあるけど、何のことかよく分からない」という方も多いのではないでしょうか。そのような方に向けて、まずは概要やメリット、必要とされている理由から説明していきます。
「タイムマネジメント」という単語を見聞きして、「時間を管理すること」と解釈する方もいらっしゃるでしょう。しかし、その解釈は間違いです。タイムマネジメントは単なる「時間の管理」ではないという点を理解しなければなりません。
タイムマネジメントとは、時間の使い方を改善して「生産性の向上」を実現することです。時間というものは増やしたり減らしたりすることができません。あらゆる人に対して平等に1日あたり24時間が与えられています。管理できるものは時間ではなく「仕事」であることを認識してください。
タイムマネジメントのメリットは、従業員一人ひとりの業務効率・生産性が高まることにより、残業時間が減ることです。残業時間が減れば、企業は残業代などのコストを削減できます。また、従業員のワーク・ライフ・バランスが実現され、満足度が向上します。
その結果、企業に対するエンゲージメント(愛着心)が増し、従業員は企業の成長のために主体的・自律的に業務に取り組むようになるでしょう。社員と会社の両者がWin-Winの関係になることは、企業の成長の原動力です。
記事の冒頭でご説明した通り、タイムマネジメントが必要とされている理由は、働き方改革が叫ばれるようになったことです。
働き方改革関連法が施行され、法的根拠が整備されたという事情も無視できません。時間外労働の上限規制が導入されたため、限られた時間の中で効率よく業務を遂行することが求められるようになりました。
このような情勢のもと、生産性を向上させて業務時間を圧縮する手法としてタイムマネジメントが注目されています。
ここからは、タイムマネジメントのフレームワークについてご説明いたします。
まず、業務全体を可視化することが必要です。ロジックツリーやブレインストーミングによって、多角的な視点から「やるべきこと」「やりたいこと」を徹底的に洗い出しましょう。この段階では、優先順位について判断する必要はありません。
業務を可視化したら、優先順位をつけましょう。おすすめは、「アイゼンハワーマトリクス」と「フィージビリティスタディ」と呼ばれる手法を使うことです。
アイゼンハワーマトリクスは、さまざまな業務の優先順位を4つに分けるテクニックです。名称は、アメリカの第34代大統領ドワイト・デビッド・アイゼンハワーの演説内容に由来します。アイゼンハワーマトリクスで優先順位をつけるための手順を示すと、以下のようになります。
アイゼンハワーマトリクスにおける第二領域の「緊急ではないが重要な業務」は疎かになりがちであると指摘されているので注意してください。
もうひとつのフィージビリティスタディとは、以下に示すような要素から、コストやリスクといった観点からの実現可能性、および、成果・効果のインパクトを見極めて優先順位を決める手法です。
アイゼンハワーマトリクスでは4つに分類するだけなので同じ領域内の優先順位を比較できないため、フィージビリティスタディも併用するとよいでしょう。
優先順位をつけたら、それぞれのタスクに具体的な目標を決め、実行していきましょう。目標設定の基準としては、ジョージ・T・ドランによって提唱された「SMARTの法則」を使うことをおすすめします。以下、SMARTの法則の一般的な内容を示します。
なお、5つの基準すべてを満たさなくても問題ありません。提唱者自身も、論文の中で目標設定の難しさについて論じているので、ご安心ください。あくまでもタイムマネジメントを遂行するためのツールのひとつとして、取り入れることが可能な範囲で活用しましょう。
タイムマネジメントを実行したら、それで終わりにするのではなく、週末などに振り返ってみる時間を設けてください。振り返って効果を測定すれば、課題を浮き彫りにすることが可能です。
物事は、必ずしも机上で立案した計画通りに進むわけではありません。想定通りに進行しない場合は、軌道修正をしましょう。
「いったん決めたことは、一切何も変えずに最後まで実行する」という頑固な態度は捨ててください。必要に応じて変更・修正する柔軟な姿勢が大切です。
以下、タイムマネジメントを実行する際に留意すべきポイントをまとめました。
何でも自分自身でやってしまうのではなく、ほかの人に任せることが可能な業務は任せましょう。業務内容によっては、自分よりも得意な人がいるかもしれません。ひとりで仕事を抱え込んでいては、タイムマネジメントを実行できません。
まず、業務内容を分解・可視化し、「自分にしかできない業務」と「ほかの人に任せることが可能な業務」に切り分けてください。
例えば、医師はどのような医療行為でも法的には実行できます。しかし、時間や労力の問題で、一部の医療行為を看護師や臨床放射線技師などに任せています。
医療以外の分野でも同様に、業務プロセスを分解して他人に任せることができる仕事を見極めることにより、「効率化」「生産性向上」「労働時間の短縮」を実現可能です。
タイムマネジメントは、業務を効率化し、生産性を向上させるために実践されます。そのためには、ゴールを明確にし、成果物の青写真を描くことが大切です。
最初に成果物のイメージをメンバー全員が共有しておかなければ、各自がバラバラな方向に走り出してしまうかもしれません。「最終的に何をしたいのか」を正確に把握できなければ、途中で計画を何度も変更することになり、無駄な業務が生じてしまいます。
もちろん状況次第で、最初に描いた青写真・完成形のイメージを後から変更することもあるでしょう。常に最初の計画通りに物事が進むわけではありません。しかし、やり直しを少なくする効果があることは否定できないので、最初に成果物のイメージをすり合わせておくことをおすすめします。
普段から業務の無駄を削減することも大切です。無駄の例を示すと、以下のようになります。
上司に書類チェックをお願いしてから戻ってくるまでに時間がかかるケースがあるかもしれません。その場合、書類作成ルールをつくって標準化しておけば、チェックに要する時間を短縮できるでしょう。
また、求められている品質以上に過剰に作り込むことも避けましょう。内部文書の場合、どんなに丁寧に作り込んでも、売り上げが発生することはありません。過不足なく、求められている資料を作れば充分です。
定期的に長時間の会議を行っているような場合は、回数や時間を削減できないか検討してください。ただし、親睦を深めるためにイベントなどを実施することは大切です。コミュニケーションの機会は完全になくさないように注意しましょう。
なお、組織においては、「分業」が行われることが一般的です。ひとりで抱えると非効率になることが多いため、可能であれば得意な人に仕事を回すほうがよいでしょう。
ただ、分業は「引き継ぎ」が不可欠です。「説明に要する時間」と「自分自身で完了させる時間」を比較し、分業しないほうが短時間で終わる見通しがある場合は、ひとりでやるほうが正解というケースもあります。
そのほか、関与する人数が多い場合、まったく同じ内容の業務を複数の人員が遂行する事態が発生しかねません。人員は多すぎても少なすぎても問題が起こります。ダブルチェックが必要な場面もありますが、その必要がない場面で業務プロセスが二重になっていないか確認してください。
パソコンスキル・ITリテラシーを高めておくことも重要です。積極的にパソコンやタブレットなどのIT機器を利用しましょう。
紙や電話でやりとりするのではなく、チャットツールを使って業務連絡を行えば情報を一度でメンバー全員に共有できて便利です。また、「Ctrl+C」でコピー、「Ctrl+V」でペーストなど便利なショートカットが多数あります。Windowsのパソコンを使っていれば共通のものなので、覚えておいて損はありません。
なお、経理では、会計ソフトへの入力量が膨大なものになります。「消耗品」「売上金」などの文字列を普通に入力していると多大な時間がかかってしまいますが、ショートカットキーを使って勘定科目を呼び出せば作業を効率化できます。
Excelなどの表計算ソフトを利用する際も、マクロを使えば短時間で事務処理を完了させられます。タイムマネジメントは、作業の効率化や生産性の向上が目的です。楽をできる部分は楽をし、短時間で業務を終わらせるように工夫してみてくださいね。
タイムマネジメントの目的は、時間の使い方を改善して生産性を高めることです。「働き方改革」が叫ばれるなか、短時間で付加価値の高い仕事をするためにはタイムマネジメントが不可欠です。
なお、業務を効率化して労働時間が短縮されると、従業員のワーク・ライフ・バランスが向上します。また、会社に対するエンゲージメント(愛着心)が増すため、主体的・自律的に業務を遂行する姿勢が生まれ、会社の成長につながります。
少子高齢化による人口減少時代に突入する状況では、タイムマネジメントを実行し、一人ひとりの生産性を高め、従業員と企業双方にとってWin-Winの関係を構築しなければなりません。
この記事を書いたコンサルタント
株式会社FCE
(編集部)
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